研究概要 |
本研究では核融合プラズマ中の原子素過程のより進んだ理解と新しいプラズマ計測法の探索のために,プラズマ中で重要な役割を持つ励起原子の関与する原子素過程の研究を行った。励起原子の関与する原子過程の中でも,特にプラズマ中で頻繁に起こる多価イオン-励起原子衝突に的を絞って研究を進めた。 理論的研究においては,多価イオン-擬水素様励起原子衝突過程に対して非常に柔軟かつ応用領域の広いnCTMCコードを完成させた。このnCTMCコードは古典力学的な計算機コードであるが,一切の近似を含まない。エネルギー,反応断面積などの古典論と量子論の対応が可能な物理量は本コードで全て計算できる。このnCTMCコードを用い,水素原子および擬似水素様原子であるアルカリ金属原子を標的とした多価イオン-原子衝突過程の全断面積,微分断面積の計算を行った。得られた結果を他の理論計算や理論モデルから得られる描写と比較した。 実験的研究においては,原子衝突実験のためのレーザー励起原子ビーム源の開発に成功した。アルカリ金属原子のガスセル型原子源と原子ビーム型原子源の両方を開発し,種々の予備実験を経て多くの経験を積み,実験的に取り扱いが困難なアルカリ原子を用いた原子衝突実験をルーチン的に行えるまでに至った。アルカリ原子のレーザー励起についてもいくつかの困難を克服し,原子衝突実験に供することのできる水準の装置が完成した。 本申請課題で達成した成果により,理論的研究と実験的研究の両方において,今後の原子衝突実験に新しい可能性を拓くことができたと考える。
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