研究概要 |
近年の分光学的手法の発展に伴い,気/液界面膜の分子レベル構造解析は精力的に展開されてきたが,生体膜やエマルション等の複雑な分子組織体の基本骨格をなす液/液界面膜の構造解析は,その適用の困難さから大幅に立ち遅れている.本研究では液/液界面膜構造解析の進展を図り,将来的な生体膜等の構造と機能の相関解明を界面物理化学的側面から展開することを目指している. 3年間の研究において,油溶性フルオロカーボン(FC)アルコールとハイドロカーボン(HC)アルコールの単独系およびそれら混合系,FCアルコールと陽イオン界面活性剤(DTAB)混合系のヘキサン/水界面ギブズ膜に関して,界面張力測定およびシンクロトロンX線反射率測定による膜状態とその構造解析を行った. 1 界面張力測定(マクロ研究) 界面張力を温度,圧力,溶液濃度,混合物組成の関数として測定し熱力学理論解析を行った.その結果,(1)FCアルコール単独系の吸着膜は膨張膜(あるいは気体膜)-凝縮膜間相転移を示す,(2)FCアルコールはHCアルコールとは凝縮膜において非混合であるが,DTABとは親水基間の強いイオン-双極子間相互作用により混合することを見出した.さらに,FCアルコール-DTAB系では凝縮膜での分子密度が凝縮単分子膜で予想されるよりも約2倍程度大きく,自発的な多重膜形成も示唆された. 2 X線反射率測定(ミクロ研究) アメリカ・ブルックヘブン国立研究所内放射光施設(NSLS)にて,鏡面条件下でのX線反射率測定を溶液濃度,溶液組成一定下で温度の関数として行なった.その結果,(1)FCアルコール-HCアルコール系の凝縮膜ではアルコール分子が2次元固体様のパッキングにある,(2)相転移点近傍では数μm程度の凝縮膜ドメインが共存する不均一な状態である,(3)FCアルコール-DTAB系では,両成分の混合により凝縮膜からの反射強度が低下する,(4)この系では凝縮単分子膜の約2倍程度の厚みに対応した多重膜が存在する,等の結論を得た.
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