研究概要 |
本研究では,構成する原子全てが生成物に含まれることからアトムエコノミーの点で非常に優れた不斉付加環化反応の革新を目的に,両鏡像体ともに入手可能な酒石酸エステル由来の複核キラル反応場において高効率的な各種エナンチオ選択的付加環化反応の実現を試み,以下の成果を挙げた。 1.金属として亜鉛を用い,アミド置換基を有し,窒素上にp-メトキシフェニル(An)基を導入したニトロンの触媒的不斉1,3-双極子付加環化反応を試み,さらに(2S,4R)-4-hydroxyornithineの合成前駆体へと変換することができた。 2.亜鉛原子を二つ有するキラル反応場設計により,触媒的ニトロソ化合物の不斉ヘテロDiels-Alder反応に成功した。 3.ベンゾシクロブテノールから発生するo-キノジメタンの不斉Diels-Alder反応の開発を行ない,金属としてマグネシウム,亜鉛を用いる設計により,フマル酸ジエチルとのDiels-Alder反応がジアステレオおよびエナンチオ選択的に進行することを見出した。 4.酒石酸エステルのメチル亜鉛塩を活用する複核キラル反応場設計により,ニトロンへの亜鉛アセチリドの不斉求核付加反応により,対応する光学活性N-(プロパルギル)ヒドロキシルアミンが得られ,さらに反応中間体をそのまま昇温すると,分子内環化反応が引き続き進行し,対応する4-イソオキサゾリンが生成することを明らかにした。この反応では,添加剤を加えると光学純度が飛躍的に向上するという新奇な不斉増幅を観察することができた。さらに,触媒的な系に展開も可能であるという知見も得ることができた。
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