研究概要 |
1 光学活性(1R,4R)-フェロセニルジアミン誘導体の合成と不斉触媒反応 光学活性(1R,4R)-フェロセニルジオールを対応するジアセテートに変換し,アンモニアと反応させたところ対応するアセトアミドアルコールが立体保持で生成した。この反応機構に関し考察を行い,二つのアセトキシ基の立体配列がフェロセンの鉄原子からの隣接基関与に影響を与え,反応性に差を生じさせていることを明らかにした。ジアセテートを銅トリフラートなどの適当なルイス酸触媒存在下で,アジドトリメチルシランと反応させフェロセニルジアジドに変換後,これを還元してフェロセニルジアミンを合成した。生成したジアミンは不安定なので対応するジトシルアミドへと変換することで,X線構造解析に適した安定なサンプルが得られた。構造解析よりアミンの立体化学が保持されていることが確認できた。フェロセニルジアミンやそのトシルアミド等のルテニウム錯体を用い,ケトンへの不斉水素移動反応について検討した。イソプロパノール中,芳香族ケトンの還元反応が円滑に進行し,対応するアルコールが最大70-75% eeの光学収率で生成した。 2 ビスフェロセン型の不斉配位子の合成 キラルなオルトオキサゾリン置換ホルミルフェロセンを二価のサマリウムトリフラートと反応させるとピナコールカップリング反応が高立体選択的に進行し,対応する光学活性ビスフェロセンピナコール配位子の合成に成功した。オキサゾリン基の4位の置換基を,フェニル,ペンジル,イソプロピル,tert-プチル基など種々の置換基を検討したところ,イソプロピル,tert-プチル基の場合に75%deの高い立体選択性で反応が進行した。ビスフェロセンピナコールとイッテルビウムとの錯体がシクロペンタジエンとアシルオキサゾリジノンとの不斉ディールズーアルダー反応を最大80% eeの高い選択性で触媒することを見つけた。
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