研究概要 |
1 ビス(ジフェニルホスフィノ)ビアリール配位子を含むパラジウム(0)、白金(0)錯体の光化学 biphep(=1,1'-bis(diphenylphosphino)-2,2'-biphenyl)等のジホスフィンが2分子配位したパラジウム(0)、白金(0)錯体について発光スペクトルや励起状態寿命の解析を行い、特異な励起状態を明らかにした。また、この錯体の各種の溶液に光を照射したときに生じる光化学反応を詳細に解析し、反応機構を考察した。 2 ビス(ジフェニルホスフィノ)アルカン配位子を含むパラジウム(0)錯体の光化学 ジホスフィンdppe(=bis(diphenylphosphino)ethane)を含む[Pd(dppe)_2]と各種有機ハロゲン化物の光化学反応を検討した。この錯体と有機ハロゲン化物との光化学反応の生成物は[Pd(dppe)_2]Cl_2であり、この反応の量子効率は、0.02%から10%の範囲であった。反応速度は、有機ハロゲン化物の還元反応の標準還元電位が高いほど大きいことが判明した。よって錯体の励起状態においてまず有機ハロゲン化物に電子が移動することが反応の初期過程であることが結論づけられた。 3 三座ホスフィンが配位したパラジウム(0)錯体の光化学 triphos(=1,1,1-tris(diphenylphosphinomethyl)ethane)を含む錯体[Pd(triphos)(PPh_3)]は発光減衰曲線が単純指数関数にならないこと、PPh_3を添加すると発光強度が増大することなどの現象を説明するために、発光強度、発光寿命、NMR等の温度変化を測定した。さらに、この錯体の炭化水素溶媒中での光照射下での反応、そしてこの錯体を触媒とした1,2-ジクロロエタンの脱塩素反応について検討した。後者の場合エチレンの生成を見いだした。 4 他のd10錯体の光励起状態 Pt(0)、Pd(0)と同じd10電子配置をもつ、Cu(I)、Au(I)錯体の発光特性について検討を行った。ホスフィンやジイミン類を配位子とする錯体の励起状態の失活を防ぐ条件を検討した。量子効率が最大10%の錯体の合成に成功したが、これはPd(0)錯体等の励起状態の理解にもつながる結果である。
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