研究概要 |
本研究では,2年間に下記4項目について検討を行った。 1.新規固定相の開発:疎水性のオクタデシル基(C_<13>H_<37>基:ODS)をシリカ表面に化学結合した固定相は,LCにおいて最も汎用性の高い固定相であるが,無機イオンなどのようにODSでは分離が困難な場合がある。17年度は,無機イオンの超高速分離のための固定相を開発した。具体的には,モノリス型シリカキャピラリーに第4級アンモニウム基を有する界面活性剤を流すことだけにより,目的の無機陰イオンを2分以内に分離定量できる固定相の開発に成功し,海水中臭化物イオンの定量に応用した。 2.濃縮分離システムの開発:応用分析に対応したオンライプレカラム濃縮を組み込んだ分離検出システムの構築を図った。とくに環境ホルモンであるビスフェノールAの濃縮分離方法を開発し,飲料水中ビスフェノールAの定量に成功した。 3.高感度化に関する研究:キャピラリーカラムの分離性能を最大限に引き出すために通常オンカラム検出が適用される。しかしながら,この場合濃度感度の低下を避けることが困難である。本研究では,光路長を約1桁向上させたフローセルの開発を試み,理論段数が1万段程度のキャピラリーカラムの場合には分離性能を損なうことなくフローセル検出が可能となり,高感度化ならびに検出の簡易化に貢献するものとして期待できる。 4.固定化酵素カラム(内径0.5mm,長さ50mm)を調製し,タンパクを含む溶液を通過させるだけで短時間にトリプシン消化できることを見いだし,諸条件を最適化することによりバッチ法とほぼ同じトリプシン消化効率を達成することができた。この結果,サイズ排除モードキャピラリーLCでタンパクを分離し,引き続いてオンラインで固定化酵素カラムによりタンパクのトリプシン分解を数分に短縮することが可能となり,タンパク消化物定量のオンライン化・迅速化に成功した。
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