研究概要 |
タングステン(VI)やモリブデン(VI)を骨格とする複合配位子と種々の異種酸素酸イオン(金属イオンや非金属酸素酸イオン)との錯生成反応は、有機配位子の非共有電子対を金属イオンの空の電子軌道に配位結合する従来の錯生成反応と異なり、酸素原子を共有することにより結合が生じる。生じた錯体(ポリオキソメタレート)の構造性や化学的性質は取り込まれた異種酸素酸イオンの種類、構造性、電荷および溶媒条件などにより大きく変化する。複合配位子は、従来のモリブデン酸やタングステン酸単独イオン配位子に比べ、ボルタンメトリックに可逆酸化還元を受け、電気分析化学的に検出可能な化学種や高いモル吸光係数を持ち分光学的に高感度で検出可能な化学種など多様な構造性や化学的性質を有する錯体種を生成することを見出した。分析化学的応用としては、Ga(III),In(III)混合物中にモリブデン酸イオンを加えると、Ga(III)だけがアンダーソン型錯体、[GaMo_6O_<24>H_6]^<3->を生成するが、In(III)は反応しないことを見出した。泳動液中に[PW_<11>O_<39>]^<7->を加えておくことで、未反応のIn(III)は泳動中に三元錯体、[P(GaW_<11>)O_<40>]^<6->を生成し、Ga(III),In(III)の同時定量が可能となることを報告した。また、極低濃度のSc(III),Y(III),La(III)と[PW_<11>O_<39>]^<7->配位子との直接反応により、三元錯体が生成することを見出した。これらの三元錯体の電気泳動移動度は異なり、同属元素であるSc(III),Y(III),La(III)の同時定量が可能となった。さらに、Cr(VI),Cr(III)の混合液にモリブデン酸配位子を加えると、Cr(III)がアンダーソン型錯体、[CrMo_6O_<24>H_6]^<3->を生成することから、Cr(VI)とCr(III)のオンライン同時定量法を開発した。
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