研究概要 |
本研究は,逆ミセルがシリカ表面に吸着するという現象を明らかにし,その逆ミセル(以下,これを吸着逆ミセルと称す)の界面場を固定相とする新規な液体クロマトグラフ(LC)分離法を開発することを目的として,逆ミセルの吸着・脱着挙動,吸着ナノ界面場の特異性,およびその界面場の設計と制御において考慮すべき主な因子に関する知見を得るための基礎的研究とともに,LC分離への応用に関する実験を行い,以下の結果を得た。 (1)水晶振動子秤量法(QCM)による逆ミセルの吸着量の測定:QCM測定装置に用いる水晶発振子の片側の金電極表面にシリコン薄膜を蒸着させ,加熱することによってシリカ表面を作成し,その表面に吸着する逆ミセルによって生じる振動数変化を測定して,その吸着量を求めた。その結果から逆ミセルの吸着挙動に対して影響を及ぼす諸因子を明らかにした。 (2)シリカゲルへの逆ミセルの吸着:シリカゲルに吸着した逆ミセルを脱着させた後,界面活性剤の濃度及び水分量の測定を行った結果,吸着逆ミセルの組成と吸着量に対するシリカゲルの粒径や細孔径の大きさの影響,及び吸着平衡にあるバルク相中の逆ミセルの組成との相関性を明らかした。さらに顕微蛍光法を用いて,石英板表面への逆ミセル吸着挙動の可視化に成功した。 (3)吸着逆ミセルを固定相とするLC分離法の開発:カラムに充填したシリカゲルに吸着させた逆ミセルを固定相として用いてo-,m-,p-異性体のHPLC分離挙動を調べた結果,1)固定相としてシリカゲルのみを用いた場合と比較して,異性体の分離能は維持されるが,固定相との相互作用の強さが界面活性剤相の被覆によって軽減されること,2)そのため短時間での分離が可能になること,3)保持時間の再現性が向上すること,4)界面活性剤相に対する内水相の比率を変えることによって保持時間の制御が可能となることを明らかにした。
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