研究概要 |
1.イリジウム触媒を用いた芳香族C-Hホウ素化反応 量論量のアレーンおよびヘテロアレーンのビス(ピナコラート)ジボロンおよびピナコールボランによる芳香族C-Hホウ素化反応が、[Ir(OMe)(COD)]_2および4,4'-ジ-tert-ブチル-2,2'-ビピリジンとから調製した触媒の存在下ヘキサン溶媒中室温で進行し、対応するアリール型ホウ素化合物を収率良く与えることを見いだした。反応の触媒活性種はトリス(ボリル)イリジウム(III)錯体であり、この錯体への芳香族炭素-水素結合の酸化的付加およびアリール型ホウ素化合物の還元的脱離を経由してホウ素化が進行する。得られたアリール型ホウ素化合物は単離・精製することなく、パラジウム触媒を用いたハロゲン化アリールとの鈴木・宮浦カップリングに利用可能であり、ワンポットで簡便に非対称ビアリールが得られる。 2.パラジウム触媒を用いたアリール型ホウ素化合物のエノンへの1,4-付加反応 アリール型ホウ素化合物の環状あるいは非環状共役エノンへの1,4-付加反応が、[Pd(dppe)(PhCN)_2](SbF_6)_2等のカチオン性二価パラジウム触媒の存在下で進行することを見いだした。反応は、アリール型ホウ素化合物とカチオン性二価パラジウム間のトランスメタル化、エノンへのアリールパラジウムの挿入、および生成したパラジウムエノラートの加水分解を経由して進行する。本1,4-付加は、不斉二座ホスフィン配位子を用いることによりエナンチオ選択的な反応に展開できる。例えば、(S,S)-dipampを用いた2-シクロヘキセノンおよび2-シクロヘプテノンの反応では96% ee以上で、また(S,S)-chiraphosを用いた2-シクロペンテノンおよび非環状エノンの反応では82-97% eeで対応するβ-アリールケトンが得られる。
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