研究概要 |
本研究では、新たに高活性な光学活性ホスフィンカルボン酸配位子を開発するとともにラクトン環、ラクタム環を有する生物活性関連化合物の触媒的不斉合成を目的としている。 2-アンスリールジフェニルボスフィンオキシドにアクリル酸メチルを反応させ、対応する付加物を可能な4つの位置異性体の混合物1a-dとして得た。この混合物を酢酸エチル-ヘキサンから再結晶して、2-ジフェニルボスフィニル-9,10-ジヒドロ-9,10-エタノアントラセン-12(アンチ)-カルボン酸メチル1bを単離した。次に1bをトリクロロシランを用いてホスフィンへ還元後、エステル加水分解して対応するホスフィンカルボン酸2bをラセミ体として得た。(±)-2bを光学活性(-)-α-メチルベンジルアミンを用いて光学分割し、光学活性(-)-2bを得た。酢酸パラジウムと(-)-3bよりパラジウム錯体触媒を調製し、酢酸2-シクロヘキセニル(4)や3-アセトキシ-1,3-ジフェニル-1-プロペン(5)とホスホノ酢酸トリエチルの不斉アリル位アルキル化反応を行ない、対応するアルキル化生成物6(収率96%(53%ee))および7(62%(50%ee))を得た。 チアゾリジンジオン骨格を分子中に有する化合物は抗菌性、抗炎症性、制癌性を有するものも多く、中には糖尿病の治療薬として使用されているものもある。しかしながらリン官能基を有するチアゾリジン誘導体についてはほとんど知られていない。THF中、室温でホスホノ酢酸トリエチルにNaHを作用させ、次いで粉末イオウを加えた。これにイソシアン酸ベンジル用いて行なったところ、低収率ではあるが一段階で環化反応まで進行した3-ベンジル-5-(ジエチルホスホノ)-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオンを8%の収率で得た。またこのときチオカーバメートが25%の収率で生成した。
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