研究概要 |
本研究は、電解系でビタミンB_<12>のモデル錯体を循環使用して、炭素ラジカル活性種を鍵とする生体プロセスに類似した新しい有機合成反応の開発と有用物質の生産に役立てることを目的として行った。 1.1,4-ヒドロキノン骨格の新規な合成法の開発(炭素骨格転位反応)。環拡大転位反応およびコバルト錯体のβ-脱離を一挙に行い、1,4-ピドロキノン構造をワンポットで作ることを目指した。そめ結果、電解法、あるいはトリブチルスズヒドリド法を用いて、2-置換シクロヘキサン-1,4-ジオン誘導体の新規な製造法の開発に成功した。本法によれば、2位にアルキル基およびアリール基が容易に導入できる。また、1,4-ジオン基の一つを位置選択的にアセタール保護が可能である。この結果は、ビアリール誘導体の新規な合成法へ繋がる有意義なデータとなった。特に、ビアリールの合成で芳香族ハライドを用いない点に合成的価値があると考えられる。1,4-ヒドロキノン体へのワンポット変換については、電解法ではできなかったが、トリブチルスズヒドリド法で成功した。これは、電解法でのワンポット1,4-ヒドロキノン体変換の大きなヒントとなった。 2.O-アルキルオキシムへのラジカル付加によるβ-アミノカルボニル化合物、すなわちマンニッヒ塩基の新規合成法の開発(炭素-炭素結合形成反応)。分子内にオキシムエーテル基を持つα-ハロアセタールに適用し、ラジカル環化によってβ-アミノアセタール体、すなわちマンニッヒ塩基を効率よく得ることに成功した。種々の1級、2級、3級ハライド誘導体に適用した結果、一般性のあるラジカル環化反応が開発できた。マンニッヒ塩基の他に、有用な1,2-アミノアルコール誘導体を得るルートも見いだすことができた。 3.ハロアセタールのラジカル環化を鍵とする連続的3成分連結反応。収率にやや改善の余地が残るものの、コバルト錯体として[Co^<III>(N_4)Cl_2]ClO_4を用いることにより、連続的3成分連結反応に成功した。また、反応中間体である炭素ラジカルをTEMPOラジカルで捕捉する反応も試みた。TEMPOラジカルの新規な還元法の開発とその応用への知見を得た。
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