研究概要 |
超分子アーキテクチャーとは分子間力などの弱い結合力を用いた複合分子システム構造体のことである。本研究では三次元的に集積して興味深い磁性を示す超分子構造の開発と、その複合材料への展開を目指した。ホストゲスト型超分子化合物では下記1,2の研究、分子間相互作用を利用した高次元物質開発としては下記3,4の研究、ナノサイズの情報記録材料の探索として下記5,6の研究を展開した。 1.クラウンスピンラベル試薬を合成した。反磁性イオンを包接させると磁性に変化が見られた。この材料はスイッチ機能をもつ磁性体や、特定のイオンの検出試薬になりえる。 2,多孔質の鉄(II)錯体を用いて、紫外光照射により誘起磁化を生じる現象を詳細に調べた。圧力によって自発磁化の有無をスイッチできたものもあった。 3.ラジカルとコバルトイオンから単一次元磁石的性格を強く持ちながらバルクの磁石として振る舞う一次元鎖状材料群を見いだした。最大級の保持力を有する材料を開発した。 4..有機ビラジカル物質で、反磁性と三重項常磁性とをいれかえる相転移(有機スピンクロスオーバー)を調べた。完全に単結晶一単結晶相転移するものも見いだした。 5.ランタノイドと3d金属イオンを含む多核錯体から単分子磁石[Dy_2M](MニCu,Ni)、[Ln_4Cu](Ln=Tb,Dy)、[Dy_2Cu_2]などを開発した。銅イオンを含むものについて高周波ESRを測定し、提案した磁気カップリング機構を検証した。 6.ラジカルキレート化合物では、これまで不安定で単離できなかったラジカルを適用して、大きな磁気的カップリングを得た。また、別の配位子を用いてメソヘリケート構造の錯体を合成した。その配位子合成の過程でカゴメ格子類似の結晶を作成した。
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