研究概要 |
有機発光体は、有機EL素子を始めフォトニクス材料として21世紀の先端技術に重要な疫割を演ずるものと期待されている。すなわち、次世代フラットパネルディスプレイ材料としての期待はもちろんのこと、発光色の自由度の高さにより白色発光も実現可能であるので、照明用光源としての期待も大きい。ここで、これら分野における研究をさらに発展させるためには、望む波長領域で高い発光効率を持つ発光体の創製が必要不可欠である。しかしながら、そのための一般的な方法論は、まだ確立されていない。本研究課題では、申請者のこれまでの有機発光体に関する研究を基礎として、新規有機発光体の創製を目指しつつ、その方法論の開拓を行った。その結果、次の事柄を明らかにすることが出来た。 1)ピリジン環を含むフェニレンエチニレン系化合物:青色強発光体の合成に成功するとともにバナナ型(2,6-ピリジン環を含むもの)が、定説に反し対応するロッド型(2,5-ピリジン環を含むもの)より高い発光量子収率を示すことを見出し、励起状態における双極性構造単位のmovability(数)が重要であると言う新しいコンセプトを提出し、強発光体創製に貢献した。 2)ベンゾフランを導入した鎖状化合物:単一の発光極大を持つ青色強発光体の合成に成功し、ベンゾフラン環導入が有機強発光体創製において非常に有効であることを示した。 3)ロッド型(パラ置換系)オリゴアレーンエチニレン類:ロッド型分子の側面および末端をそれぞれ電子供与基および吸引基(または逆に電子吸引基および供与基)で修飾する手法により発光特性の劇的向上に成功した。 4)スター型(三重メタ置換系)オリゴアレーンエチニレン類:分子形状をスター型にすることにより世界で始めて青色最強発光体(Φ_f【approximately equal】1.0,log ε>5)の創製に成功した。また、この系は三重にメタ置換された構造であるにもかかわらず、アームのπ共役系間にコア(ベンゼン環)を介した新規π共役(メタ共役)が起こることを発見した。
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