研究概要 |
1.希土類金属錯体の合成と溶媒の探索 酸素原子を含まない配位子としてCN一を選択し、Y^<3+>水溶液からシアン錯体の合成を試みたが、いかなる条件においても水酸化物が沈殿した。配位子としてエチレンジアミン(ED)を選択し、配位子自体を溶媒として合成を試みたところ、[Y(ED)_3]Cl_3錯体を得ることに成功したが、本錯体は、極めて吸湿性に富むことが明らかになった。 非水溶媒であるCH_3CNがYCl_3を溶解することを見出したので、化学量論のEDを添加し、[Y(ED)_3]Cl_3錯体を得ることに成功した。錯体合成の際に、窒化ケイ素粉末を錯体溶液に混合することにより、均一に脱酸素焼結助剤を添加する手法を開発した。 2.窒化ケイ素焼結体の作成と評価 [Y(ED)_3]Cl_3を脱酸素焼結助剤として添加し、窒化ケイ素焼結体の作成を試みたが、焼結密度は60%内外であり、極めて焼結が阻害されることが判明した。Maxwellの式で推定した緻密体の熱伝導率は、脱酸素焼結助剤を添加しない場合よりも高い値であった。また、従来の研究では報告されていないY_2Si_3N_6が粒界相として確認された。また、1800℃でホットプレスを行い緻密体を得た後、1850℃で熱処理を行った結果、焼結体に大きな膨れが生じた。これは、添加した錯体が完全に熱分解する前に緻密化したためと思われる。 3.第4族窒化物、及び、炭化物焼結助剤の添加効果 第4族の窒化物、及び、炭化物を脱酸素焼結助剤として添加した焼結体を評価した。熱力学計算は、MX(M=Ti,Zr or Hf,X=N or C)のうち、ZrとHfの窒化物のみが脱酸素焼結助剤として働く可能性があることを予測したが、MXを添加した焼結体は、すべて無添加に比べて熱伝導率が低くなった。しかし、第4族窒化物を添加した場合、著しく焼結性が改善されるという意外な効果があることが判明した。
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