研究概要 |
Poly(p-phenylene benzobisthiazole)(PBZT)などの全芳香族剛直高分子は硫酸やメタンスルホン酸などの強酸にしか溶解せず,屈曲高分子のように有機溶媒を展開液として用いた分子量分別法は適用できない.本研究ではメタンスルホン酸を展開溶媒とし,多孔性シリカゲルを充填剤としたカラム分別装置を作製した.カラム分別では溶解した分子鎖がシリカゲルの細孔に出入りしながら流下していく.その際,細孔内に入ることのできる短い分子鎖とできない分子鎖とが徐々に分離されていく.この場合にはシリカゲルの細孔の大きさと分別しようとする分子鎖の大きさの関係が重要となる.そこで充填剤として用いるシリカゲルの種類,カラム温度,流下速度などが分離能に及す影響について検討した.また分子鎖長の揃ったPBZTを用いて希薄溶液からの結晶化を行い,分子量分布が結晶化におよぼす影響などについて検討した.得られた知見を以下に示す. ・充填剤に用いるシリカゲルの種類と分別可能な分子鎖長の関係を明らかにした.この結果により,目的に応じて最適な充填剤(シリカゲル)の選択が可能となった. ・分子鎖長が揃った試料を希薄溶液から結晶化させると,棒状晶の両側から突出した分子鎖部分が短くなり,基本的には単独の棒状晶となることがわかった. ・剛直高分子では分別することにより,形態学的に分子量分布を評価することが可能である. ・PBZTのMSA溶液は黄色を呈し,可視吸収スペクトルでは440nm付近に極大を示した.この吸収スペクトル強度の濃度依存性,分子量依存性を検討し,カラムから溶出してきた分別されたPBZTの濃度を測定する方法を確立し,未分別PBZTの分子量分布を明らかにした. ・分子鎖長のそろったPBZTを用いて,分子鎖長の違いが結晶成長速度に与える影響を検討した.PBZTの結晶成長速度(G)はG∝exp(-C/ΔT) C:定数 の関係が成り立ち,結晶成長が二次核形成過程律速型であることが明らかになった.またPBZTの結晶化においては結晶成長表面に分子鎖の配向をそろえる回転拡散が支配的であることも判明した.
|