研究概要 |
層状ペロブスカイトであるK_2NiF_4型のSr_2CuO_2X_2(X=Cl,Br,I)とDion-Jacobson化合物AB_2M_3O_<10>(M=Nb,Ta)に対して、電気化学法を用いてLiインターカレーションを行ない、新超伝導物質の探索を行なった。まず、Sr_2CuO_2X_2は、よく知られた高温超伝導体(La,Sr)_2CuO_4と基本的に同じ結晶構造を有し、ファンデアワールス力により弱く結合した負に帯電したX-二重層間にLi^+イオンはインターカレートされる。超伝導転移温度Tc=8KのLi_xSr_2CuO_2Br_2、Tc=4.5KのLi_xSr_2CuO_2I_2を発見した。しかしながら、X=Clのとき超伝導転移は観測されなかった。これらの新超伝導体のa軸長は3.98-4.03Åで、ホールドープ型超伝導体(La,Sr)_2CuO_4のa軸長3.78Åとくらべるとかなり長く、電子ドーピングに適していると思われる。また、Dion-Jacobson化合物AB_2M_3O_<10>は、MO_6八面体が3つ連なった構造を有するが、Aが欠損したAO_2層を有し、その欠損サイトにLiイオンを挿入することが可能である。はじめKCa_2Nb_3O_<10>に対して化学的Liインターカレーションを行うことにより5K以下で超伝導を示すことが山中や高野らにより報告された。一方、我々は、電気化学法によりLiインターカレーションを行い、新超伝導体Li_xASr_2Nb_3O_<10>(A=Rb,Cs)(Tc〜6K)を発見した。しかし、同じ結晶構造を有するAB_2Ta_3O_<10>に対してもLiインターカレーションを行なったが、超伝導は出現しなかった。 Sr_2CuO_2X_2もAB_2M_3O_<10>(M=Nb,Ta)も元素の部分置換によっては、超伝導が出現するだけの電子キャリアドープは不可能である。したがって、Liインターカレーションは新超伝導物質の探索には有効な手段である。
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