研究概要 |
AlInN化合物半導体は、高効率高輝度の短波長光デバイスへの応用が期待されている工業価値の高い材料である。また,Al_<0.83>In_<0.17>NがGaNの格子定数と一致し,現在盛んに研究されているGaNをベースとしたレーザダイオードのクラッド層としては最適であると報告されている。しかし,従来の有機金属気相成長方法ではInNとAlNとのエピタキシャル温度の差があまりにも大きいため、AlInNの単結晶を作製するのは困難である。我々の研究グループは,数年前からシンクロトロン放射光に注目し,放射光励起がZnTeの低温エピタキシャル成長に有効であることを実証した。そこで,本研究では、これまで培ってきた成長技術を統合することにより、シンクロトロン放射光励起有機金属気相成長法を用いて規則的なAlInNのナノ構造の作製技術を確立することを目的としている。本研究を実施した結果、低温成長により、ほぼ全組成領域でのAlInNが作製できることが明らかになった。AlInNの格子定数が組成に対し、直線的に変化し、Vegard則が成立していることが実験的に証明した。得られたAlInNのバンドギャップはAlの含有量によって変化、制御できることが分かった。原子間力顕微鏡を用いて表面観察した結果、成長された膜の表面粗さは数ナノメートルであり、非常に滑らかであることが分かった。また、シンクロトロン放射光ビームラインを利用し、X線吸収微細構造法により、異なった細孔サイズのナノポーラスアルミナのAl吸収スペクトルを測定し、原子局所構造の変化が観測された。さらに、AlInNの局所構造の変化の解明を試み、観測された吸収スペクトルは第1原理の理論決算結果とほぼ一致した。
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