研究概要 |
記録密度を上げる目的で,記録ビットを小さくするほどデーターデーター転送レートが低下する。この改善のために,1996年に面発光レーザー(VCSEL)の二次元アレイを用いた超並列光ヘッドを提案し,2001年にVCSEL用のエピウェーハにて10μm素子を縦横100個ずつ二次元に同時形成できた(全素子が2mm×2mm)が,各レーザー素子からの出力はせいぜい0.1mWであった。超並列近接場光ヘッドでは8μmの出力窓から発するレーザーを100nm以下の超微小開口を通して近接場光に変換することである。平成16年度までは100nm開口で1μWの出力が得られた。平成17年度は,開口を30nmにすること,その開口からの近接場出力を記録に必要な10μWに増大させるパワーアップが研究課題である。 研究室で開発した三次元のFDTD(時間領域差分法)解析により,開口を穿孔する材料に金,銀,アルミ,銅などの薄膜金属を選び,薄膜金属表面に幅が10nmで高さが30nm,ピッチが118nmのナノ構造の回折格子を形成することで近接場光エンハンスメント現象が起こることがわかった。直線偏光波が金属薄膜に近づくと,s偏光波(横波)の電界強度に応じて薄膜を構成する金属原子の電子雲が表面に偏り,表面プラズモン密度波(縦波)が生じる。光波はGaP結晶の中から30nm開口のある金薄膜へ進む。 光波とプラズモン波の分散関係を調べると,光波は線形であるのに対して,プラズモン波は非線形である。光波とプラズモン波との位相整合のためには回折格子のグレーティングベクトルを利用するのがベストである。すなわち,逆格子はエネルギーのデメンジョンなので,物質中の光波・プラズモン波の波数分散を逆格子によるエネルギー保存則を利用して整合させることが可能であることがわかった。 近接場光を効率よく引き出すために,(1)VCSEL出力部に高性能反射防止膜をコートした半導体(GaP)マイクロレンズを設置し,開口付近にVCSELレーザービームを集光させる研究と(2)80nm厚の金薄膜に幅30nm,高さ30nm,ピッチ120nmの二次元回折格子アレイとを作製した。しかしながら,18年度に実験すべきことが残った。NSOM(走査近接場顕微鏡)技術による近接場光のスループット測定技術の確立とプラズモンの回折格子による共鳴実験のための入射波長微調整技術である。また30nmで無く,10幅のナノ加工グレーティング技術も今後の課題である。研究完成まで,あと1-2年であろう。
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