研究概要 |
超音波キャビテーションによって発生する気泡の圧壊から生ずる発光現象を解明するため、発光スペクトルの測定、ラマン散乱法による分子振動スペクトル測定を行った。超音波周波数110kHz用の振動子・石英セルからなる試料部、インピーダンス整合器を製作し、電力をモニターすることによりキャビテーション発生に最適な振動条件を決定した。超音波出力を熱的に測定する場合、試料の溶存気体量に影響されることが明らかになった。 最も発光が強い条件下でラマン散乱測定を行った。OH伸縮振動のスペクトルに注目し、超音波オフの場合のスペクトルとの差分をとると、3500カイザーにわずかな差が観測された。これがOHラジカルからのスペクトルだとすれば、初めてOHラジカルを実時間で観測したことになるが,その確証は得られなかった。そこで,ソノルミネセンススペクトルの解明に重点を移した。アルゴンガス飽和した水からの発光3スペクトル測定を行い、ORラジカルからの310nm,290nm,340nmピークを観測することができた。これ1はOHラジカルの電子・振動準位間遷移を考慮することによって説明された。アルゴンガス飽和した水にエタノールを混合し(最高濃度100mM)、ソノルミネッセンススペクトルの濃度変化を観測した。発光スペクトルの積分値は濃度とともに指数関数的に減少する。310nmでのOHラジカルの発光ピークは積分値よりも急速に消光する。これはアルコール分子が気泡内で蒸発してOHラジカルやホットスポットにより分解され、気泡温度が減少するためである。超音波周波数1MHzの実験では、アルコールがより顕著に影響することがわかった。SDS界面活性剤を混ぜた水溶液からのソノルミネッセンスは,超音波パワー,周波数に依存する。これはSDS分子・気泡間移動速度の影響であることを明らかにした。また,NaCl水溶液からのNaD線を観測し,Na原子発光が気泡内で起こることを解明した。
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