研究概要 |
本研究課題は,非線形ハミルトン系の有効な解析手法であるBirkhoff-Gustavson(BG)標準化に対する逆問題について,過去に科研費交付を得て得られた課題の成果を踏まえた研究の深化と適用対象の拡大,理工学への応用を目的とする.得られた成果は以下のように要約できる. 1 BG標準形共有の観点から,一般の斉次多項式ポテンシャルの印加された摂動調和振動子の変数分離可能性の代数表現を得た.この代数表現は,Bertrand-Darboux条件の代数表現でもある. 2 BG標準化逆問題は数式処理の援用無しで厳密な解を得ることが難しく,既存のプログラムの改良や新たな開発も重要課題である.正準変換の表現にHori-Deprit表現を採用したプログラムLINAを開発した.従来のプログラムよりも高速であることが,複数の数式処理言語上で確認された. 3 時間依存ハミルトン系への標準化概念の拡張は発展的話題のひとつである.このクラスの系の無限自由度版である時間依存Schrodinger方程式の数値計算の前処理に,我々のアルゴリズムを効果的に応用したSymbolic-umeric解法を提案し,実際のシステムに適用して良好な計算結果を得た. 4 「理工学への応用」のひとつの方向性として量子情報論分野を選んでみた.その過程から,システム数理に深く関る(古典)可積分系と類似構造を持つ量子統計モデル空間上の系を発見した.また,キュビット素子の有力候補のJosephson接合素子系とHenon-Heiles系とが4次BG標準形多項式を共有することを見出した.
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