研究概要 |
動的条件下での骨折様式の高精度の予測を可能とするため,骨の変形・強度特性に関する異方性,圧縮と引張りの非対称性,塑性変形と損傷並びにそれらのひずみ速度依存性のすべてを表現できるモデルを定式化した.骨の弾性特性は弾性係数のひずみ速度依存性を考慮した横等方モデルとして定式化した.粘塑性ひずみ速度部分はTsai-Wu基準型散逸ポテンシャルを仮定して導いた.損傷を考慮するために等方損傷変数を導入し,その発展式を定式化した.そしてそれをひずみ等価性の仮説に基づいて構成式に組込んだ. 負荷-除荷試験や繰返し負荷試験結果を再現するために,等方-移動組合せ硬化則を導入した.その結果,異なるひずみ速度における応力-ひずみ関係と破断時期,損傷の累積によって生じる除荷時の剛性低下,負荷-除荷試験により生じる残留ひずみが表現可能であることがわかった. モデルの記述精度向上のため,繰返し圧縮負荷試験により損傷が骨の力学特性に及ぼす影響を評価した.その結果,負荷過程及び除荷過程の初期の弾性係数は各サイクルとも差が無かった.また,CarterとHayesの弾性係数-ひずみ速度関係の,極低ひずみ速度域への適用性を検討した結果,表現できないことがわかった. このモデルを有限要素解析コードLS-DYNAに組み込む計算アルゴリズムを開発した.一要素の6面体モデルに種々の荷重条件を与えて解析を実施し,構成式モデルに同一荷重条件を与えて直接計算した場合と比較した.両者はほぼ完全に一致し,組込みの妥当性を確認した.ついで,定式化したモデルと従来モデルを用いて,足関節に軸方向衝撃が加わる場合についてパラメータスタディを行った.新しく定式化したモデルにより,傷害部位,程度,骨折様式のいずれに対しても,従来モデルに比べてより死体実験結果に近い予測結果が得られ,モデルの有用性を確認した.
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