研究概要 |
骨の主成分であり生体親和性に優れるハイドロキシアパタイト(HA),生体吸収性を有する高分子材料ポリL乳酸(PLLA)およびポリ乳酸(PLA),延性を有する生体吸収性高分子材料ポリカプロラクトン(PCL)を原材料として生体吸収性複合材料を試作し破壊特性について調べた. (1)HA/PLLAの破壊特性: HA/PLLAの破壊特性に及ぼすHA粒子形状の影響を調べ,マイクロサイズの粒子(粒径5μm程度)が最も優れた破壊特性を示すことを明らかにした.HA/PLLAにおける主要な破壊メカニズムはHA粒子周辺での応力集中によるPLLAの局所的な塑性変形である. (2)PLLA/PCLブレンドの破壊特性: PLLA:PCL=85:25のときに破壊特性は最大となった.PLLAとPCLは非相溶であるため相分離生じ,PCLは球状構造をなす.この球状構造が数μm程度で分散しているときに破壊特性は最大となる. (3)HA/PLLA/PCL複合材料の破壊特性: HA/PLLAにPCLをブレンドする新材料を作製し破壊特性を調べたところ,PCLの含有率が5wt%で最大となった.PCLを加えることでPLLAとPCLの絡み合い構造が生成し,延性が増加することで破壊時のエネルギー散逸量が増大する. (4)PLA/PCL/LTIブレンドの破壊特性: PLA/PCLブレンドの相構造を改善するために,リジントリイソシアネート(LTI)を0.5wt%添加した.その結果,PCL含有率が10wt%のときに破壊特性は最大となった.LTIの添加によりPCLの球状構造は減少し,PLAとPCLの絡み合い構造が増加することで応力集中体の減少とともに延性変形が増大することで破壊特性が向上したと考えられる. (5)PLLA/PCL/PLLA-CL: LTIは相構造を改善することがわかったが,生体適合性については不明である.そこで生体用材料としてすでに使用されているPLLA-CL共重合体を第3成分としてブレンドしたところ,PLLA/PCLの破壊特性を向上できることが明らかになった.
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