研究概要 |
1.PC/LCPブレンドについて 射出成形したPC/LCPブレンドの引張強度とLCPドメインのフィブリル化,分子配向性との相関性について検討した結果:(1)PC/LCPブレンドは非相溶系であるが,PCの溶融粘度が高いため,LCPドメインをフィブリル化,高い分子配向性させやすく,試料強度の向上に有利である.(2)射出速度の増加は中間層におけるLCPフィブリルの分子配向性の上昇とコア層における分子配向性の低下を生じさせるため,試料の引張強度の変化があまりなかった.(3)試料厚さの減少は高い分子配向性を有するフィブリルの試料断面に占める割合が高くなるため,引張強度が大きく向上した.(4)LCP含有量の増加は単なるLCPフィブリルの数量を増やしただけでなく,中間層におけるフィブリルの分子配向性も向上させたため,試料の引張強度が著しく向上した.(5)厚さ2mmの試料の引張強度は複合則の理論引張強度より遥かに高い値を示す相乗効果が見出された. 2.熱間圧延について 熱間圧延加工による射出成形したポリプロピレンの高次構造および引張特性の変化について検討した結果:(1)冷間圧延加工は試料の寸法回復が生ずるが,熱間圧延加工では優れた寸法安定性を有するとともに最大圧延率が80%まで圧延できる.(2)圧延加工は基本的に試料の内部における結晶化度を低下させるが,熱間圧延の場合ではその低下程度が冷間圧延より少ない.(3)熱間圧延加工は圧延率40%まで,分子配向性とE'が冷間圧延加工より低いが,60%以上になると,両方とも急激に向上する.(4)熱間圧延した試料は冷間圧延より引張塑性変形領域における応力レベルが高くなっており,特に60%以上圧延すると,かなり高い引張強度と延性特性を有することがわかる.以上のようにいずれの圧延温度においても圧延率40%までは試料の力学特性の改善にあまり期待できないが,熱間圧延加工では高い圧延率が得られるため,材質の改善,材料強度と延性の向上に有効な方法であると言えよう.
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