研究概要 |
1.二層試料を用いた歯車の成形 スリーブ材,コア材の二層からなる材料を試料として歯車成形する場合,それぞれの材料の仕事量が等しくなるように変形する.また成形された歯断面では,スリーブ材が歯先で厚く,歯底で薄くなる.均一になる事が理想で,このためにはどのような材料の組み合わせが良いか調べた.その結果スリーブ材が薄い場合には,コア材の強度が低く変形しやすい材料が良いことがわかった.ただし材料の組み合わせによって著しく変わると言うほどのものではなかった. 2.予め浸炭された材料を試料とした歯車の成形 この試料では,浸炭部分の硬度に応じて2層または3層からなる材料と見なす事で有限要素解析が行える.また,この場合にも成形された歯車の歯底部分では,浸炭層が薄くなる.どのような浸炭処理を行えばこの影響を抑えられるかを調べたが,処理の違いによる影響はほとんど現れなかった.これら浸炭試料での歯車成形中の材料の流動挙動は,それぞれの層の材料の応力ひずみ曲線によって支配されている事も明らかにされた. 3.調質鋼材を用いた歯車の成形 著者らの提案した二段充てん法による成形では,調質処理を行った中炭素鋼でも歯車が成形できることが確かめられた.通常の歯切りによる歯車では,浸炭焼き入れなどの熱処理がかかせない.しかし,調質鋼材を試料とした二段充てん法ではこの処理が不要となる事を意味している.また2と同様この場合の材料の流動挙動も調質鋼材の応力ひずみ曲線によって支配されていた. 4.円筒試料の内径を拡張する新しい成形法の提案(特許出願申請中) 二段充てん法における唯一の欠点は,成形品端面にバリ状の凹凸が現れる場合のあることであった.円筒試料の内径を段差付マンドレルで拡張し,外周部の材料をダイスの歯形に押し込むように流動させる新しい成形法を提案した.これによりバリ状の凹凸のない歯車が成形でき現在特許として申請中である.
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