研究概要 |
16年度の研究では研究代表者が開発した油膜付き水滴加工液を使用し,マグネシウム合金を精密切削加工したときの水素発生量の測定,水素発生を抑制しつつ切り屑のリサイクル性を維持する油剤の開発,ドリル加工,タップ加工での加工特性を調べ,植物油をマレイン化することで切り屑のリサイクルも可能で水素発生も抑止できる油剤が開発できた(特許申請中). 17年度はその成果を学会発表するとともに,さらに安全でリサイクル可能な手法の開発に取り組んだ.一般的にエンドミルやドリルなどの切削工具は加工により生成する切屑を速やかに飛び散らす構造となっているため,本研究では工作物を取り囲む構造の作業ケースを設け,その中に溜まった切屑を吸引・圧縮して安全なブロックとした.しかしながら,一度飛散した微細切屑は完全には吸引できず,実際には作業後にケース内を丁寧に清掃している.マレイン化油剤で安定化しているとはいえ,万一のことを考えればやむをえない.本研究で用いた油膜付き水滴加工液や極微量油剤潤滑などの環境対応加工では切屑の回収が大きな課題となっている.そこで,発想を転換し,工具自体から切屑を出さないシステムを開発することにした. エンドミルの工具切刃を新たに設計し,切屑生成時の運動エネルギを利用して工具の中心方向に飛ぶようにした.工具ホールダを中空として中心に飛んできた切屑を吸引し,主軸内に取り込むことができた.加工後の工作機械テーブル上,工作物上には切屑はほとんど残らなかった. 同様の切屑吸引をドリル,タップなどのマシニングセンターで使用する工具全てに適用する(ドリルは開発中)ことができるならば,工作機械は大きな変革が可能となる. 上記の知見を基に,経済産業省の「平成18年度地域新生コンソーシアム研究開発事業」に,本科研の研究代表者が統括代表者として,題目:"吸引式切り屑完全回収型次世代切削加工システムの開発"で応募し,平成18年5月31日に採択された.マグネシウム合金加工も視野に入れて,更なる発展を目指す.
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