研究概要 |
非球面軸受により潤滑状態を改善するには最初に接触応力を評価する必要がある.そこでコンフォーマル接触状態にある硬い円筒と柔らかい凹面との接触圧力の計算に,組合わせ厚肉円筒の弾性理論を応用して接触範囲と接触応力を求める理論式を導出した.式の有効性を評価するため,式から求めた値とFEMによる値を比較して非常によく一致することを確認した.非球面に至る前段階の実験として,接触応力を滑り方向に対し異方性を持たせてPin-on-Plate往復動滑り試験を行い,滑り方向に対して潤滑液を保持するような接触応力状態では摩擦係数の著しい減少を確認した.乾燥状態では摩擦係数に異方性は認められなかった.接触応力状態を,潤滑液が保持されるように創生することで,人工関節の潤滑状態は改善できると考えられる.そこで転がり軸受のコロを利用した円筒面に潤滑液を保持するためのリセスを研磨加工により形成して振子試験を行った.その結果,摩擦係数はリセスを形成した方が僅かに減少したものの,pin-on-Plate試験ほどの効果は認められなかった.Pin-on-Plate試験と振子試験の接触応力には15倍程度の違いがあり,振子試験では構造上接触応力を大きくできない.そのためリセスに潤滑液が十分保持できなかったことが摩擦係数の減少が小さかった原因と考えられる.股関節内の接触応力とともに,多方向滑りを定量的に評価する手法の確立も大変重要である.今年度はSaikkoらによるオイラー角を使った滑り線軌跡の計算法の問題点を明らかにした.関節角度成分から角速度ベクトルと滑り線軌跡を求める計算法を示した.臨床的関節角度成分から角速度ベクトルや滑り線軌跡を求める問題点も明らかにした.
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