研究概要 |
油潤滑下における炭素繊維強化PEEK複合材料(PEEK Comp.)の摩擦摩耗特性を,すべり速度10〜19(m/s),荷重範囲294〜1177(N)の過酷な実験条件下で調べた.また,発生した摩耗粒子の熱分解分析,発光オイル分析,レーザー回折式粒度分布測定,SEMによる形態観察を行った,以下に得られた結果を示す. 1.WJ2,PEEK Comp.は共に,荷重が増加すると,ある荷重で焼付きを生じた.焼付き開始荷重は,すべり速度15m/sの場合,WJ2,PEEK Comp.に対して各々,〜750(N),〜900(N)であった.焼付きへ遷移する時の軸受特性数(ηω/Pm)は,WJ2に対して〜2x10^<-9>,PEEK Comp.に対して〜4x10^<-10>であった. 2.PEEK Comp.の焼付きの開始は,リング温度に強く依存し,〜100(℃)で流体潤滑から混合潤滑へ,180〜190(℃)を超えると焼付きへと変化した. 3.焼付きによって,PEEK Comp.摩耗痕内部では,激しい延性破断,炭素繊維の脱落と流動,出口部では多数の長いワイヤー状やリボン状のせり出しが観察され,摩擦熱による大規模な軟化流動が軸受の破損を引き起こすことが示唆された. 4.焼付きによってPEEK Comp.から数十ミクロンを超えるロール状(円柱状)摩耗粒子,薄片状摩耗粒子,炭素繊維摩耗粒子等が発生した. 5.熱分解分析法により,PEEK樹脂摩耗粒子はフェノールに分解され,その検出は十分可能であることがわかった,しかし,実験装置で発生する摩耗粒子量は少なく,その検出は潤滑油の濃縮を行わなければ難しいことがわかった.簡易的な濃縮法及び定量的評価法が確立されれば,十分異常診断に応用できると思われる.摩耗粒子分析法は,PEEK樹脂軸受のシビア摩耗プロセス,潤滑様式の変化を検出することが可能であることがわかった.
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