研究概要 |
本研究ではレーザトラッピングという手法を含め,レーザを用いた微粒子やDNAなどのマニピュレーションに焦点を置き、微粒子に対し光放射圧を作用させマニピュレーションする手法と液体内の流動を利用して,微粒子やDNAなどの運動を誘起させる手法を用い、以下の成果を得た. 1)幾何光学理論に基づいて算出した微粒子のトラッピング力は,照射されるレーザ光の出力に比例し,レーザ光の入射角と屈折角により決定される無次元数トラッピング効率に依存する.レーザ光の入射角は対物レンズの開口数に依存し,屈折角は微粒子と媒質の屈折率に依存するので、シリカ微粒子,ガラス微粒子,ポリスチレン微粒子に対し,レーザトラッピングを行った際に得られるトラッピング効率結果を得た. 2)レーザトラッピング用の光源にQスイッチを用いたパルス化レーザ光では、従来の連続発振レーザ光を用いた場合のトラッピング力を上回ることができた.また大気中微粒子のレーザマニピュレーションが可能となった.マニピュレーションに必要なレーザ出力は,パルスレーザ光のピーク出力に関係性があり,平均照射出力に依存しないことがわかった. 3)微粒子レーザマニピュレーションの操作性向上のために,ガルバノスキャナを採用した.PCとDAボードを用いてガルバノスキャナを制御するための信号を出力し,微粒子に照射する光軸を高速走査することで,一本のレーザ光によって複数の微粒子を操作し,複数微粒子の輸送が可能となった.また,複数微粒子の輸送の原理を応用して,時間変容するマイクロ文字の作製が可能となった. 4)液滴内微粒子にレーザ光を照射することで,液滴内に生じる微小な対流を利用し,微粒子の回転を行った.回転数は照射レーザ出力に依存せず,回転径に依存することがわかった.微粒子の回転に利用する対流は,マランゴニ対流であるが,対流の強さや大きさを評価することができなかったので,今後、数値解析,解析解が必要である.
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