研究概要 |
これまでの研究ではサルモネラ菌のべん毛の構造を考慮して変形の解析を行い,クローズドコイルべん毛の大変形とノーマルべん毛の微小変形の実験結果を理論解析によって説明した. 今回の研究ではビブリオ菌の首振り運動の観察及び解析を行った.ビブリオ菌は一本のらせん形状のべん毛を回転させて水中を運動する.ビブリオ菌の遊泳運動を高輝度暗視野顕微鏡で観察すると菌体を振動しながら移動するものがあり,首振り角度も小さいものから大きいものが見られる.この首振り運動はべん毛の中心軸と菌体の対称軸が傾くことによる力学的アンバランスの効果と考えられる.ビブリオ菌の首振り運動について調べるために,高輝度暗視野顕微鏡の画像をビデオレコーダに記録した後,その画像をNIHイメージを用いて解析し,ビブリオ菌の移動速度や首振り角度の測定を行った.また,首振り角度や移動速度をFFT解析することにより,首振り運動の周波数を特定した.ただし,菌体によっては周波数のピークを検出できる菌も見られたが,周波数に顕著なピークを持たない菌も見られた.観察と並行して,ビブリオ菌の菌体を回転楕円体で近似し,べん毛が菌体の対称軸と傾いている場合に生じる菌体の首振り運動について定常ストークス流の立場で力とモーメントの釣り合いを考慮した解析を行った.解析結果より首振り運動するビブリオ菌の運動の軌跡や,べん毛の傾斜角と首振り角度の関係について明らかにした. これらの研究成果の一部を2006エアロアクアバイオメカニズム国際会議で発表した.
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