研究概要 |
羽ばたき型の小型飛翔体を開発するため,飛翔昆虫(トンボ)の羽ばたき運動によって発生する非定常流体力と羽ばたき翼周りの渦構造の同時計測技術を開発し,昆虫の飛翔で重要と考えられている翅まわりの三次元的な渦構造を定量的に可視化し,渦構造と流体力の関係を定量的に評価した.また,トンボの翅にクロム皮膜を蒸着し,羽ばたき運動時の翅のひねりや強度について調べ,羽ばたき型小型飛翔体用の翅の製作方法について検討した.これらの知見に元にマイクロ加工技術を用いて軽量で強度の高い人工翅を作成し,トンボの羽ばたき運動を模擬した小型の羽ばたき装置を開発した. 開発した羽ばたき型小型飛翔体を用いて風洞実験を行い,羽ばたき周波数と流体力の関係について実験的に調べ,羽ばたき型小型飛翔体の飛翔条件をはじめとする,以下の知見を得た. (1)トンボは翅二対で自重の1.37倍,前後翅いずれか一対の場合,自重の約0.56倍の力を鉛直方向に発生させている. (2)鉛直方向および水平方向に発生する流体力の合力を解析した結果,前後翅で自重の約0.63倍であり,推進角度は水平面から約52deg〜61degであり,前後翅で大きな違いは見られない. (3)トンボのまわりの渦構造を定量的に可視化した結果,渦と翅の距離が最も近く,渦の直径が翼弦長以内の強い渦度の場合,発生する力が最大になることがわかった. (4)MEMS技術を用いることにより従来よりも翼の重さを40%軽減し,軽量で高強度の人工翅を開発した. (5)羽ばたき機構が発生させる流体力は,羽ばたき周波数の二乗に比例する.開発した羽ばたき機構を浮上させるには,羽ばたき周波数を40.8Hzにすれば良いことがわかった. (6)羽ばたき型MAVの浮上条件を定量的求め,設計指針が得られた.
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