研究概要 |
少子高齢化社会を迎えて,簡便性と環境に優しい特性を有している空気圧システムを福祉工学に応用する研究が行われている.しかし,生産システムの自動化と省力化を目的として開発された空気圧システムは,動作時に空気圧騒音を発生し,人間に強い不快感を生じさせる.パワーアシストやヒューマンインターフェイスを目的として,空気圧システムを使用する場合,空気圧システムがすべて自動化されて,無人の状態で要介護者にサービスが提供されることは少ないこと,介護者と要介護者,または要介護者と生活を共にする人間が空気圧システムの近くにいて,要介護者に優しくかつ介護者の作業量や負荷が減ることを求めているからである.このような環境で空気圧システムを使用することは新たな試みであり,安全性,親和性,信頼性など検討すべき事項が多くある.本研究では,空気圧システムの駆動に伴い生じる騒音の問題に着目し,研究を進めた.具体的には,現代人間工学の観点から,人間の感性情報である脳の活動と生理の状態を測定し,音響シミュレーションによりフェードインの効果を用いた空気圧騒音の低減方法を見出して,この低減方法に基づいて、人工筋肉を使用した新たな空気圧用消音器を開発した.この空気圧用消音器を使用することにより,要介護者に与えるうるささを著しく低減する効果が得られる.他方,介護者の観点から考察すると,この高性能空気圧機器は複雑な操作が必要でないこと,安全であること,消費電力が少ないことが特徴であり,福祉用機器に求められる人間との親和性に優れている.以上の結果を整理し,国際会議と論文講演会で論文講演するとともに,文献調査や資料調査したことをまとめて日本フルードパワーシステム学会誌に解説の記事を投稿し掲載された.さらに特許出願し,発明協会主催の全国特許流通アドバイザー会議の優れたシーズとして紹介された.
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