研究概要 |
これまでの直接形ジメチルエーテル燃料電池(DDFC)の研究により,DDFCのアノード電極反応では水を消費するため供給ガスを相対湿度100%以上にする必要があることが分かっている.しかし,過剰な水を供給するとフラッティングなどの問題を引き起こす.また,発電時においてセル温度が不均一となり,セル温度が高い領域では水不足により電解質膜が乾燥し,セル温度が低い領域では流路内に水が溜まる可能性がある. そこで本研究では,セパレータ流路に毛管力を持つウィックをはめ込むことにした.その結果を要約して以下に示す. (1)本研究で行った試験では,フラッティング現象は現れない. (2)DMEガス供給試験では,ウィックをセパレータ流路に挿入してもI-V特性は変化しなかった. (3)DME水溶液供給試験では,ウィックをセパレータ流路に挿入しても最高出力密度は変化せず,限界電流密度は向上した. (4)気液混合供給試験では,ウィックをセパレータ流路に挿入することで,カソード酸素流量200ml/minにおいて内部抵抗を小さくすることができ,最高出力密度を向上することができた. (5)当然ではあるがDMEガスを用いた圧力損失分布試験では,負荷電流の増加に伴い圧力損失はすべての区間において増加した. (6)しかし水素ガスを用いた圧力損失分布試験では,負荷電流の増加に伴い圧力損失はすべての区間において減少した. (7)セル流路を直接観察できる可視化セルを作成し,DDFCの発電時における電極表面の観察を試みたところ,アノードはカソードと比較し,かなりの乾燥状態にあり,カソード面観察において,0.12A/cm^2で初めて結露(流路中央端部)が確認できた.0.16A/cm^2では流路中央〜下部端部に結露が現れたが,流路下段1〜3段では結露が観察できなかった.しかし,0.2A/cm^2では流路中央部から出口部へかけて全体的に結露が見られた.
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