研究概要 |
水素・空気,並びにメタン・空気混合気の超希薄燃焼は,低環境負荷燃焼の観点から非常に重要である.そして,この希薄燃焼では,固有不安定性により,火炎が不安定に振る舞うことが知られている.予混合火炎の固有不安定性は,火炎挙動に大きな影響を与えるので,火炎の変動とも密接な関連がある.従って,この関連性を明らかにすることが出来れば,固有不安定性が火炎挙動に与える影響を火炎変動解析のみから把握することが可能になる.つまり,火炎変動解析による火炎不安定性の診断が可能になる.そして,火炎をスマートコントロールする手法を確立することが出来る.また,種々の燃焼形態にこの手法を適用することが出来れば,別の角度からの燃焼現象の把握に役立つと考えられる.この様に,予混合火炎の固有不安定性と火炎の変動の関連性を明確にすることは,重要かつ有用であり,その応用範囲は広いと思われる. 本研究では,平面バーナー上にメタン・空気予混合火炎を形成させ,火炎からの発光の照度変化を測定し,火炎の変動を解析した.周波数解析,並びに,カオス時系列解析で用いられている手法を採用して,火炎変動の特性を調べ,そのカオス的な振舞を考察した.得られた結論は以下の通りである.(1)平面バーナー上には,0.74<φ≦1.00の領域で平面状の火炎が形成され,φ≦0.74の領域でセル状の火炎が形成される.そして,当量比が小さくなると共に,セルのサイズ,および,セルの深さとそのサイズの比は,単調に大きくなる.(2)平面状の火炎が形成される0.74<φ≦1.00の領域で、は,変動の強さは殆ど変化しないが,セル状の火炎が形成されるφ≦0.74の領域では,当量比が小さくなると共に単調に大きくなる.(3)火炎変動のパワースペクトルは,低周波数領域において周波数の逆数に比例している,つまり,本実験でも「1/fゆらぎ」が観察されている.また,火炎の変動周波数と一致する周波数において,パワースペクトルにピークが生じている.(4)火炎の変動には,カオス的な振舞が見られる.そして,アトラクター,相関次元,リアプノフ指数は,当量比と密接な関係がある.つまり,火炎の変動と固有不安定性には,強い関連性がある.この結果は,火炎変動解析が火炎不安定性の診断に適用可能なことを示唆している.(5)混合気の流量は,火炎のゆらぎに対して,触媒の効果以上に影響が強く,現象を強く支配している.従って,カオス時系列解析により,流量のある程度の見積も可能となる.
|