研究概要 |
自然冷媒である二酸化炭素を用いた冷凍サイクルにおいて,圧縮/膨張ユニットを組み込んで絞り損失を回収することによりエネルギー効率向上を図る試みとして,ベーン形膨張機とスクロール形膨張機の基本性能を明らかにし,膨張機内で発生する遷移膨張漏れ流れや膨張/圧縮一体形機を組み込んだサイクルの性能を検討した. ベーン形膨張機に関しては,すき間の最適化や軸シール部の減少などにより,その全効率は59%まで向上した.遷移臨界膨張過程は膨張機供給温度により大きく変化し,供給温度が低い場合には「蒸発遅れ」が観察されたが,広い運転範囲において良好な膨張機性能を示した.また,圧縮機の部材をそのまま用いたスクロール形膨張機の全効率は56%であり,最適設計により十分な膨張機効率が得られるであろうことが示唆された.一方,膨張機内で発生する遷移臨界漏れ流れについてモデル実験を行った結果,狭い隙間における漏れ流量は,入り口加速,流路中の摩擦損失および加速損失を考慮した均質流モデルにより正確に見積もることができるが,チョークした流れではモデルの改良も必要であることが分かった.さらに,膨張機と2段目の圧縮機が一体となる圧縮/膨張一体形機を試作してその運転特性を実験により調べた.一体形機を組み込んだ冷凍サイクルの運転バランス点およびサイクル性能を,膨張機と圧縮機それぞれの性能特性を考慮して検討したところ,膨張弁を用いたサイクルに比べ約21%の性能改善が得られることが分かった.また,運転バランス点が設計点からずれるとサイクル性能が低下するが,バイパスや予膨張により放熱圧力を最適に保つことにより性能改善が得られることが示された.本研究では良い性能を持つ圧縮機や膨張機を開発するまでには至らなかったが,本研究で得られた知見は,二酸化炭素冷媒を用いた家庭用エアコンの実現に対し,その可能性を示すものである.
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