研究概要 |
強磁性のマグネタイト粒子を水あるいは油等の溶媒中に分散させたスラリーを磁性流体と呼ぶ。この磁性流体に磁場を印加すると、流体界面がスパイク状に持ち上げられる現象が生じる.本研究では,このスパイク現象を間欠磁場により断続的に生じさせ,これにより誘起される容器内流動を利用して、高温-低温伝熱面間の熱輸送を促進させる方法を提案した.この方法によりどの程度高い伝熱促進効果が得られるか,下面加熱,上面冷却された容器内に磁性流体を封入した体系について,高-低温伝熱面間の熱伝達率を測定することにより調べた.測定に用いた容器は,断面40x100mm^2,高さ7mmで,上下面は銅板で製作されており,ヒータおよび冷却水により等温条件で加熱・冷却される.この容器内に磁性流体を所定の液面高さH_<mag>まで封入した.磁性流体には、水ベース磁性流体M-300及び油ベース磁性流体N-504を用いた.この容器を水平に設置し,液面に垂直に定常及び周期t=0.1〜60sの間欠磁場を印加した。磁束密度Bは0〜85mTの範囲で変化させた.容器の加熱面及び冷却面の温度を熱電対により測定し,磁性流体の熱伝導率λおよび熱伝達率hを求めた.その結果,以下の知見を得た.(1)磁場を印加すると上述のスパイク現象が発生した。このスパイクの数や高さは,液面高さH_<mag>および磁束密度Bによって決定される.(2)本実験で使用した磁性流体M-300及びN-504の無磁場下の熱伝導率は,それぞれ0.49,0.27W/mKであった。一方,磁場下での熱伝導率は磁束密度Bの増加と共に高くなり,B=50mT以上で飽和し,その値は無磁場下に比べ約50%程度高くなった.(3)容器内に磁性流体を封入し,間欠磁場を印加すると,熱伝達率が大幅に高くできることが分かった.とくに本実験範囲内において,M-300ではH_<mag>=5mm,t=0.1s,また,N-504ではH_<mag>=3.5mm,t=0.1sで熱伝達率は極大値を示し,それぞれ175および150W/m^2K前後の値が得られた.この値は無磁場下の熱伝達率に比べ約3〜6倍程度高い.(4)N-504を封入した容器の液面上方の空間を水で満たすと,この熱伝達率hをさらに向上でき、とくに,H_<mag>=2mm,t=0.3sの場合,h=300W/m^2Kを超える値が得られた.
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