研究概要 |
超臨界圧水冷却原子炉の冷却材喪失事故時を対象とした超臨界圧からの減圧過程における管内流過渡熱伝達特性を明らかにするために,臨界圧の小さいHCFC22を試験流体として,基礎となる臨界圧近傍域での定常熱伝達と過渡熱伝達の実験を行って,熱伝達係数の変化のデータを得た.テストセクションは,内径4.4mmのステンレス製円管で,試験流体は管内を垂直上向きに流れる.減圧範囲は超臨界圧の5.5MPa(換算圧力1.1)から臨界圧を経て亜臨界圧の4.0MPa(換算圧力0.8)以下までの圧力範囲とし,定常実験ではその間の適当な間隔の圧力についてデータを得た.また,質量速度は400と700kg/(m^2・s)の条件である. それぞれの実験について得られた成果を,以下に示す. 1.定常時,超臨界圧および比較的低い亜臨界圧の条件において熱伝達劣化が生じない熱負荷条件においても,臨界圧近傍の臨界圧4.99MPaから若干低い4.74MPa(換算圧力0.95)の圧力範囲において,急激な熱伝達低下を伴う限界熱流束状態が発生し,管壁温度が局所的に大きい値をとることを明らかにした.この熱伝達の低下は,熱負荷が高いほど,より低い圧力範囲まで認められる. 2.減圧過渡時においても,高熱負荷条件では,定常の場合と同様,初期圧力の超臨界圧において熱伝達の劣化が生じない場合でも,臨界圧より幾分低い圧力範囲で熱伝達の低下(限界熱流束状態の発生)が発生し,発生した熱伝達低下は,定常時と比べて,かなり低い圧力まで維持され,その間,管壁温度は広い圧力範囲で高い値が持続されることを明らかにした.その際の管壁最大温度は,減圧速度によらず,また圧力によらず,ほぼ一定であった.熱負荷が高いほど,その圧力範囲は広く,管壁温度の最大値は高くなる.したがって,過渡時における熱伝達低下が生じる圧力範囲の拡大には注意を要する.
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