研究概要 |
初年度(平成16年)の主な検討課題は,四輪独立アクティブ操舵車両における操舵と制駆動力配分の統合制御であった.制御系は二層構造として設計しており,上位レベルは通常のアクティブ車両制御器である.出力される舵角は目標運動に必要なコーナリングフォースとヨーモーメントに変換され,下位レベルで,これらの値について最適な舵角と制駆動力を決定する.まず,基本的な関係として,横力と制駆動力の配分によりタイヤ負荷の最大値を最小化するMinimax最適化が凸計画問題に帰着されることを確認した.これより,四輪独立操舵については,二分探索法と黄金分割法の組み合わせで横力と制駆動力の最適配分が実現することが分かった.CarSimはタイヤのスリップ率制御により,所定の制駆動力を生じさせる機能を持つため,数値シミュレーションの実施においては,Simulinkで記述した配分アルゴリズムのブロックを追加する方法を用いた.翌17年度には車両に実装する際に中心的な課題となると予想されるリアルタイムアルゴリズムの開発に主力を注いだ.研究室で現有のRealtime Linux版のCarSimによって,四輪独立操舵車両にMinimax最適化の意味で厳密なアルゴリズムを実装しようとすると処理速度が不足することが確認された.そこで,本配分問題に固有の特性に着目して厳密解に収束する近似解法を導出してリアルタイム処理を実現させた.前輪独立操舵,四輪独立操舵の両者について,CarSimを中心として構成されたリアルタイムシミュレータを用いてダブルレーンチェンジなどの被験者実験を行い,限界走行時の操縦安定性への寄与を確認した.
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