研究概要 |
従来,非線形システムに対する実用的な制御系設計法として,線形化した近似モデルに対して線形ロバスト制御理論を適用する方法が多く用いられていた。この方法は,1)非線形システムに対するロバスト性が保証されない,2)実際の非線形システムの確率的なパラメタ変動と線形ロバスト制御理論で用いる特異値などの確定的ロバスト性評価尺度との関連が不明確である,という問題があり,その解決が望まれていた.このような現状に対し,本研究では,1)制御系の要求仕様を満足しない確率を評価基準とする,新しい非線形制御系の実用的設計手法を提供すること,2)この方法を非線形システムの1つの例として車両運動制御系に適用し,実用的ロバスト制御系設計法としての有効性を確認すること,を目的として研究を行った. この方法では,まず制御対象システムを不確定なパラメタ変動をもつ非線形システムとしてモデル化する.制御系のロバスト性を,制御対象の不確定パラメタの変動に対して制御系が不安定化する確率,および与えられだ評価基準を満足しない確率として評価する.このような確率の解析的な評価は困難であるため,非線形制御対象モデルを用いた多数の数値シミュレーション結果を用いてモンテカルロ法によって推定する.モンテカルロ法の適用に際しては,並列演算システムを構築し,計算時間の短縮を図った.複数の評価基準に対しで計算された確率の重み付き和から,工学的な設計基準を表す確率的評価関数を定義する.これを大域的最適化手法である遺伝アルゴリズムを用いて最適化する.この設計法を車両運動制御系に適用し,その有効性を確認した.ヨーレイトフィードバック後輪操舵系,非線形予測制御理論による後輸操舵系,四輪トルク制御系,統合運動制御系について提案手法を適用し,最適パラメタを求めた.その結果,提案する方法確率的な評価基準と大域的探索法である遣伝アルゴリズムを組み合わせた実用的な非線形制御系の設計であることが確認された,
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