研究概要 |
「マイクロマニピュレーションシステム(微細作業装置)」において力覚フィードバックがシステムの操作性を向上させる事実は,研究代表者らの研究を含め幅広く認知されている.しかしそのようなシステムがいまだ試作機レベルに留まっている理由には以下の2点があげられる.(I)安定した力覚フィードバックを実現するために必要な信頼性を有するハードウェア技術の欠如,(II)離れた場所からでも遠隔操作を可能にする制御およびソフトウェア技術の欠如.本研究ではこの2つの課題を克服し,インターネットを介してどこからでも安定して操作できる(遍在化)マイクロマニピュレーションシステムを開発することを目的とする.2年計画で実施された本研究の流れおよび成果の概要を以下に述べる. 初年度は主に,既マイクロマニピュレータシステムの機構面からの機能性向上と,遠隔操作システムの特性を把握するための基礎的な遠隔操作実験を行った.続いて17年度は,16年度に実施した遠隔制御実験で得られた知見を生かして,通信時間の遅延が存在する環境下においても安定なマイクロマニピュレーション作業を遂行可能なシステムを構築すると共に,より広範囲な微細作業に対応可能なシステムの拡充を図ることを目的として,(1)タイ・日本間の遠隔操作型力覚フィードバック実験,(2)通信時間遅延対策を目的とした仮想環境モデルの構築,(3)オフセット型平面ヒンジリンク機構を用いたプローブの姿勢制御の3点について重点的に取り組んだ.その結果,助成期間中2度にわたりタイ〜日本の遠隔操作実験を行い,17年度末に実施した2回目の実験では(2)の仮想モデル実験が有効に機能し,安定した遠隔操作を行えることを検証できた.併せて(3)の新型機構の試作機の開発を通じ,微細作業システムの一層の機能向上の可能性を確認できた.
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