研究概要 |
(1)電磁鋼板のベクトル磁気特性の測定 誘導機固定子をヨークとして用いた,電磁鋼板の2次元ベクトル磁気特性測定装置を設計・構成した。切込入円形試料を用いると,通常の円形試料と比較して高精度な測定が可能となることを示した。回転磁束密度/各方向交番磁束密度を印加し,電磁鋼板のベクトル磁気特性を測定した。 (2)直流スカラー/ベクトルヒステリシスモデルの開発 ストップ/プレイモデルを用いたスカラーヒステリシスモデルの拡張モデルを開発し,モデルの表現能力を改善した。拡張モデルの数学的な性質を明らかにし,同定法を開発した。 ストップ/プレイモデルのベクトル化手法を検討した。重ね合わせによるベクトル化モデルと,幾何学的な拡張によるベクトル化モデルについて,回転ヒステリシス損の算出式を導出した。前者のベクトル化モデルの同定手法を開発した。これらのモデルの回転ヒステリシス特性表現を改善するためにモデルの一般化を行った。 (3)均質化による交流ヒステリシスモデルの開発 均質化法を用いて異常渦電流損を考慮した交流ヒステリシスモデルを開発した。電磁鋼板内部での磁壁移動の振舞いを考慮することにより,渦電流損失の算出精度を改善した。さらに,正弦波波形/高調波を含む磁束波形に対する交流BHループの表現精度が向上した。 (4)マイクロ磁気学計算手法の開発 マイクロ磁気学計算によりベクトル磁気特性の物理的な側面を検討するため,LLG方程式の並列計算コードを開発し,PCクラスタまたはグリッド計算を用いた並列マイクロ磁気学計算を行った。また,よりマクロな解析が可能な磁区構造モデルを開発し,磁壁エネルギー算出法やエネルギー最小化手法の改善を行った。マイクロ磁気学計算との比較により,磁区構造モデルの有効性を検証した。
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