研究概要 |
アルゴン希釈酸素ガス(酸素5〜20%)でCuとAlを原子層オーダで交互スパッタし,基板温度300〜700℃で石英ガラス上にCu-Al-O薄膜を堆積した。CuとAlのスパッタ時間比により[Cu]/[Al]比は制御可能だったが,酸素モル濃度制御は困難で,CuO-CuAl_2O_4-Al_2O_3系組成線近傍もしくはその組成線よりもやや酸素過剰であった。低基板温度ではアモルファス構造だったが,基板温度700℃でCuAl_2O_4多結晶相が出現し,Cu過剰薄膜ではCuO多結晶相も出現した。高抵抗だったことも踏まえると,デラフォサイト酸化物CuAlO_2でp形導電性に寄与しているCu^+イオンが存在していないことを示唆している。一方,窒素雰囲気中の大気圧下800〜1050℃熱処理により,酸素モル濃度が減少し,Cu_2O-CuAlO_2-Al_2O_3系の組成線に近づき,CuAlO_2多結晶相が出現した。Cu過剰薄膜では過剰CuがCu_2O多結晶を形成し,Al過剰薄膜では過剰AlがアモルファスAl_2O_3相を形成していると考えられる。[Cu]/[Al]=1では,CuAlO_2の化学量論組成を有し,透過率スペクトル基礎吸収端はCuAlO_2の直接遷移型の禁制帯幅(3.5eV)に対応していた。p形で10^2Ωcm程度の抵抗率を有していたことから,CuAlO_2が支配的な薄膜が作製できたと考えられる。熱処理前の堆積薄膜での酸素濃度の減少のため酸素ガス濃度の更なる低減を試みたが,Alターゲット間放電が不安定化し薄膜堆積が困難であった。また,アモルファス構造堆積薄膜の窒素雰囲気中でのKrFレーザ照射(約10〜10^3mJ/cm^2)によるレーザアニール効果も調べたが,10^2mJ/cm^2程度以上では薄膜がアブレーションされ,10^2mJ/cm^2程度未満では薄膜の特性において変化は観られなかった。
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