研究概要 |
本研究はシリコン(Si)基板表面に光電子集積回路を実現することを目的として,低伝搬損失かつ良好な光デバイスと光の結合効率が期待できるSi基板埋め込み型光導波路の開発を目指して実施した。陽極化成で多孔質化したSiの酸化により形成するSiO_2層を光導波路として利用することを目標とした。 主として検討した課題は,陽極化成による多孔質Si形成の方法である。 導波路作成には,Siの酸化による体積膨張で細孔部分が埋められるよう,多孔度は55%,ドーピングによりコア部とクラッド部の屈折率差をつけるために細孔径はクラッドよりコアのほうが大きいことが望ましい。 フッ化水素酸(HF)系の電解液を用いてSiの陽極化成の実験を行った結果,高HF濃度での化成では化成部の厚さは変わらず細孔径が大きくなる。高電流密度の化成では,細孔径は変わらず,化成部厚さが厚くなる。また,多孔性Siは,通電しなくても溶液中に溶出し,化成時間の増加に対しては,細孔径,化成部厚さ共に増加する。更に,メタノールやエタノールの添加により化成部表面粗さを減らすことが出来る。 最終的な導波路の形成にまでは至らなかったが,本研究で得られた知見を基に,陽極化成途中でHF濃度を変え,その後通電を止めて溶出させることにより所望の細孔分布を持つ膜が形成できると考えられる。 この方法でSi基板上に光導波路を形成できれば,Siは大面積高品質結晶が容易に入手可能なので種々の光集積回路に利用できるだけでなく,Siの電子回路技術との併用により光電子集積回路の実現が期待できる。光電子集積回路の採用が有効な例として,プレーナ型多層構造光電子集積回路ニューラルネットワークの構造を提案した。
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