研究概要 |
多次元空間上連続密度に従ってランダムに発生するベクトルに対する量子化器の最適歪み性能を考えると,量子点数に関して漸近的に第一次項までが既知であるが第二次項については筆者によるもの以外に研究がない.筆者は,第2次項の同定ならびに付随する量子化器を得ることを目的として,特に漸近的二段階量子化モデル化の導入により,構成的立場から研究に取り組んでいる.これまでは2次元量子化器に限定し理論を展開してきた.その結果を基礎に,今回目論んだのは,同モデルを多次元に拡張することである.結果として二次項を評価すること,付随する設計法(測地圧伸器)を提案すること,また各第二段階量子化器を対称に接続することで境界上での転移の生成率が最小化できることを発見したこと等の成果が得られた.さらに,二次元量子化において第一段階量子化器に一様格子を用いる理論的方法を提案した. さて量子化法は情報源符号化,学習,連続通信路における信号検出など幅広く用いられる.量子化,特に多次元量子化に関してはレート歪理論が重要である.本研究ではレート歪理論において研究が次のように進展した.情報源の確率分布は連続・離散だけでなく,その中間敵領域にフラクタルなど特異情報源がありそのレート歪み関数を同定する問題は未解決である.筆者は,かつて自己相似集合上のマルチフラクタル情報源に関して小歪みにおける漸近的性質を決定しているが,今回の研究においてこれを一般のマルコフフラクタル情報源に拡張しレート歪み関数の漸近的性質を得た. さて,情報源符号化はユニバーサル符号化を含むシャノン理論の基盤的領域である.研究の応用としては通信路容量の計算,ネットワーク情報理論,なども含まれる.これらについても研究成果を得ている.
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