研究概要 |
本研究では,グループ鍵共有という極めて困難な問題を包含する放送型暗号通信システムにおけるグループ鍵管理方式を実現するために,公開鍵リストが不要なID情報に基づく暗号系に着眼した.またユーザのID情報の集合に樹構造(tree structure)を導入することにより,秘密鍵の個数が指数関数的爆発を生じることなくユーザのグループを指定して,ID暗号系によりグループの共通鍵を配送するという独創的な発想に基づき,上記の極めて困難な問題の解決を試みる. まず本年度は,結託閾値がなくセンタの計算負荷の軽い理想的なID情報に基づく鍵共有法の研究を行った.素因数分解問題の困難さを安全性の根拠とし,多項式オーダーの時間で容易に解ける離散対数問題を2回解いて,それらの解を合成することにより各ユーザの秘密情報が容易に生成できて,またユーザ間の共通鍵の生成はただ1回の冪乗演算で実行できるという,画期的なID情報に基づく鍵共有法と暗号系の実現法の開発に成功した. 実現法の詳細はつぎの通りである.まずp,qを大きな素数とし,n=pq,L=1cm{p-1,q-1},L_1=L/(p-1),L_2=L/(q-1)とおく.ただし,p-1=αγ,q-1=βδと素因数分解され,α,βは大きな素数で,γ,δは大きな素因数を含まない合成数とする.次に方程式ID^α_l=g^<αx_l>(mod p)及びID^β_l=g^<βy_l>(mod q)をx_l及びy_lについて解いて,ID_lに対応するユーザlの秘密情報をd_l=αL_1x_l+βL_2y_l(mod L)とし,各ユーザlに秘密哩に配布する.最後に任意の二人のユーザをA,Bとして,AB間の鍵共有はK_<AB>=ID^<d_A>_B=ID^<d_B>_A=g^<αL_1x_Ax_B+βL^2y_Ay_B>(mod n)により容易に実行できる.
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