研究概要 |
人間社会には人間のモラルや価値観などに起因する問題が存在する.さらに,情報通信網の普及・高度化により,問題の影響範囲や程度は著しく大きくなっている.一方,家電製品などに組み込まれているコンピュータは人間の活動・行動を支援するエージェントであり,それらエージェントがネットワークを介して接続されて情報交換を行い,人間-エージェントの二重社会が作られつつある.本研究では,人間の実社会に存在する問題を抑制・軽減することを狙いとし,これに貢献できるエージェントを開発することを目的として研究を行い,以下の成果を得た. 人間の行動への間接的な介入によって問題抑制を行うエージェントの開発を行った.人間-エージェント社会のモデルを構築し,そのシミュレーションから,人間の行動に対する他人からの評価が問題抑制に大きな効果を持つことを見出し,これに基づいて客観的事実および評価を効率的に人間に伝達することによって人間の行動を誘導するエージェントを開発し,その有効性をシミュレーションで確認した. 人間の行動への直接的な介入によって問題抑制を行うエージェントの開発を行った.上述の研究成果を踏まえ,また直接的介入をするエージェントが使用者である人間から疎まれることを防ぐために,客観的事実,他人からの評価に加え,エージェントの使用者からの評価に基づいて,人間に代わって行動を行い,問題抑制を行うエージェントを開発し,シミュレーションによってその効果を確認した. エージェントに適応能力を付与するための学習機能の利用とその高度化を行った.多数の人間,エージェントからなるシステムであることを考慮し,学習機能として強化学習を採用し,エージェント間で必要な情報を伝達することによって学習を協調して行う方法,および目的を小目的に分割することによって学習を高速化する方法を考案し,それらの利点をシミュレーションで確認した.
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