研究概要 |
本研究は,酸素飽和度に依存せずに皮下血液領域の深さと厚みを特定し,正しい血液濃度と酸素飽和度を求め画像化する,新しい光学的トポグラフィ法の開発を目的とした. 1.皮膚組織層状モデルのモンテカルロシミュレーションにより,酸化・還元血液の光吸収が等しくなる7ヶ所の等吸収点から最適2波長を420nmと585nmに選定した. 2.波長800nmにおける近赤外光等吸収点画像を追加した3波長での吸光度比から,深さと厚みを同時推定する新規手法を開発した. 3."吸光度比-深さ"特性データをシミュレーション生成し,参照テーブル化した.これを用いて被検者のメラニン・血液濃度測定値から,個人差・部位別差補正実験式を確立した. 4.選定した3波長干渉フィルター,冷却式モノクロ型CCDカメラ,コンピュータを用いて,等吸収点画像撮影装置を構成した.また,校正済み標準反射板と照度計を用いて,幾何条件一定の下,装置全体の分光感度と輝度特性を測定し,校正データを算出した. 5.画像データを補正後,メラニン・血液濃度を重回帰式で推定して深さと厚みを算出した上で,最終的に血液領域の凹凸分布画像を表示するソフトウェアをMATLABで開発した. 6.厚み既知の人工皮膚ファントムを製作し実験を行い,手法の原理を確認した.性能は,正常部メラニンと血液濃度の推定精度が約5-10%,深さ・厚みの精度が約200μmであった. 7.正常人の上腕,前腕,手のひらの静脈に本手法を適用し,深さと厚みの計測を試みた.画像感度は良好であり,血管凹凸分布分解能は2mm程度,深さ・厚み分解能は約200μmを確認した.また,内出血部位に対して深さと厚みの明確な変化を捉えた定量解析に成功した. 8.先行研究の3波長血液濃度・酸素飽和度推定法を本手法と統合し,血液濃度と酸素飽和度,深さと厚みを併せて,色管理用液晶ディスプレイに表示するシステムを構築した.
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