研究概要 |
複雑なランドスケープを有するスカラ評価関数の最適化が要求されるロボットの制御(学習)問題においては,制御方策に問題のすべてを帰着させるのではなく,身体系の構造(ダイナミクス)自身をも積極的に改変し,評価関数を多谷構造から漏斗型の単一の安定状態を持つ構造に変えることも必要となる.このような制御系と身体系の有機的調和によって,制御方策のグローバルな安定性と有限時間内での制御の定が保証されることが期待される. このことは,学習曲面における特異点の存在をありのままに受け入れ,それらへの対処のために学習アルゴリズムの高機能化・複雑化を論じる近年の学習理論の考え方とは一線を画する.身体系のダイナミクスという,もう一つの設計パラメータを積極的かつ適切に活用できれば,そもそも特異点が存在しないような「素直な」学習曲面を構成でき,その結果として比較的「簡便な」学習方策であっても実時間整定や初期値に対する頑健性が期待できるのである. そこで本研究では,複数の体節から構成される多脚歩行ロボットならびにヘビ型ロボットの自律分散的ロコモーション制御問題を例に,上記作業仮説の妥当性をシミュレーションならびに実機実験を通して検証した.具体的には,複数の体節をアームで結合したヘビ型ロボットを主として採り上げ,勾配法に基づいて設計された制御系と,ロボットの体節間のジョイントであるアームの剛性を変更することで,体節間の力学的干渉を調整可能な機構系を取り上げ検証した.その結果,機構系と制御系により創り出される,学習曲面の形状が学習の効率の向上に寄与していることを示した.また,制御系と機構系のカップリングには,ある種の最適な形態があることを示した.
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