研究概要 |
情報通信において送信信号を暗号化することは個人的なデータを秘匿して送るのに欠かせない技術である.最近,連続値連続時間カオス暗号通信系を制御システム理論を用いて構成する方法が提案されている.しかし,連続値連続時間暗号系のセキュリティ評価指標は,ディジタル系と違い,いまのところ提案されてしない.このため,システム同定や適応同定手法などを考慮した暗号系の安全性解析の基礎理論をつくる必要がある.さらに,むだ時間やノイズに対するロバスト性を確保しながら,適応同期化の不可能な条件を導出することにより安全性の高いカオス暗号通信システムを構築することが必要となる.本研究では,連続値カオス暗号通信系の安全性解析の基礎理論および設計理論をロバスト制御理論および適応制御理論を用いて構成した.平成16年度は,適応制御理論を用いた暗号システムを相対次数と非最小位相性の観点から提案した.平成17年度は,ロバスト制御理論を用いて,むだ時間の影響を受けにくい暗号システムを提案した.さらに,そのシステムのセキュリティ解析のために,リアルタイム型Error Function Attack(EFA)関数を定義し,モンテカルロ法を併用したセキュリティテストのための統計量を提案した。平成18年度は,リアルタイム型EFA関数の統計的評価に,標準偏差と尖度を用いることが有効であることを確かめ,従来の暗号システムであるactive-passive decomposition model, delay differential equations,およびone-way coupled map latticeに適用し,その性能を検証した.さらに,確率的探索手法であるparticle swarm optimization法を用いた秘密キー探索法を提案し,one-way coupled map latticeがセキュリティが高いことを示した.
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