研究概要 |
振動系を表すシステムダイナミックスモデルを考え,予測のための基本ルールか先験情報が組み込まれたネットワークに対して構造化学習を行い,自己組織化によってダイナミクスのモデルと振動特性を同時に同定可能な新しい手法を提案した.数値実験の結果,地盤・構造システムの有する物理的な意味を損なうことなく柔軟性に富むネットワーク構造を組み立て,このネットワークを最適化することにより,構成方程式とパラメータを同時に同定可能なことが明らかになった. 次に,多面型万能履歴復元力モデルを有する非線形構造系を対象に,ウェーブレット変換の適用によってその動特性を同定するアルゴリズムを提案した.同定の基本は,入力地震加速度,ノイズを含む観測応答量,パラメータに依存して計算される応答量にウェーブレット変換を適用し,評価関数を定義した上で,改訂準ニュートン法による繰り返し計算によって評価関数の最小解を得ることにある.応答計算にはルンゲ・クッタ・ギル法を,ウェーブレット変換の計算にはFFTを用いた.数値シミュレーションを行い,同定パラメータ,応答の再現性などを検討した結果,提案手法の有効性が検証できた. さらに,これまであまり解析されていない劣化履歴復元力特性を有する非線形多自由度振動系を対象に,重点的サンプリングフィルタと棄却法を用いた,より効率的な構造同定手法を提案した.数値シミュレーションを実施し,提案手法と従来手法に関する同定精度,非線形挙動の再現性を比較検討した.固有円振動数についてはどの手法も同定精度に大差がなかった.提案手法を用いれば,非線形系パラメータを高い精度で同定することが可能となった.最適同定パラメータを用いて応答量を求めた結果,提案手法は真の挙動を比較的精度良く再現できた.従来手法との対比より,提案手法の優位性,有用性が明らかになった.
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