研究概要 |
研究期間初年度(平成16年度)は、土中への油の浸透および保持特性に関する室内実験を実施した。含水比を調整した試料土(山砂および砂質ローム)表面に灯油およびA重油をそれぞれ自然浸透させ、浸透油量の経時変化を試料の初期含水比およびサクション圧との関連において検討した。その結果、試料土の初期含水比の増加につれ浸透油量は減少し、浸透が生じる試料土の初期含水比は約40%が限界であった。次に油を充填したテンシオメータを用い、初期含水比を調整した試料土についてサクション圧の変化を調べた。不飽和砂の油に関するサクション圧は、発揮される不圧自体が水に比べて小さく、体積含水率の増加につれて急激に減少する結果が得られた。これを定量的に評価するため、負の圧力水頭〜体積含水率の関係(特性曲線)をVGモデルを用いて近似し、カラム実験における油の浸透シミュレーションを行ったところ、実験状況がよく再現できた。 平成17年度には、各種洗浄剤による油汚染土の浄化実験を行い、浄化効率を比較検討した。洗浄剤には界面活性作用および気泡連行作用をもつ過酸化水素(濃度0.5%)、水酸化ナトリウム(0.1%),ケイ酸ナトリウム(1%,5%)を使用した。カラム試験と連携した洗浄実験では、いずれの洗浄液でも灯油については70%以上の浄化効率が得られたが、過酸化水素は油回収率90%近くと非常に高い浄化効率を示すことが確認された。また、一定回収率達成に要する洗浄液の必要量に関しても、過酸化水素は0.4PV(累積流出間隙体積)と少なく、洗浄液の土中への供給に時間を要するものの、他の洗浄液に比して経済的であることが確かめられた。さらに、撹拌洗浄実験(室内洗浄プラント)による油汚染土中の油分回収率については、重油汚染ロームに対する過酸化水素(0.5%)の適用が最も効果的であることが判明した。
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